21.法人設立のよる節税方法(その2)

節税方法

 前回は法人の形態について書きましたが、今回は本命の節税方法です。個人側から法人へ移した「不動産収入」を経費として消費するor所得税率の低い配偶者や子供へ再配分することで、キャッシュをできるだけ多くして私生活を豊かに過ごしましょう。

個人事業主では使えない節税方法

 個人事業主ではできない節税方法は以下の通りです。
・家族への給与・退職金
・社宅制度
・出張手当
・交際費、福利厚生費
・小規模企業共済、セーフティ共済への加入
・法人カード、法人会員他
 順に項目ごとに解説していきたいと思います。

家族への給与・退職金

  法人を設立すると自分を含め、家族も社員とすることができます。個人事業主でも青色申告の専従者給与という形、家族に給与を出すことができますが、以下の制限があります。
 ①他社でパートや正社員として働けない
 ②扶養家族にできない
 ③高額な給与が支給できない

 最近では共働き世帯が多いですから、①と②はかなり痛いですよね。不動産事業で数十軒所有していたら、③の影響も受けると思います。専従者給与は基本的に労働者としての扱いですので、相当特殊なスキルを持っていて業務に貢献している状態でないと月20~30万程度しか支給できないと思われます。それ以上支給すると税務署から否認され、追加徴税が待っています。
 
 これに比べ法人という形を取れば、①②の制限はなくなります。(②は年収が高くなると別の意味で自動的に外れますが。)③は従業員という形であれば制限として残りますが、役員として登録し事業の連帯保証人になっている場合などは、リスクを背負っているため給与に関してはほぼ制限はなくなります

 以上のことから、法人の方が給与面での自由が利くため、節税には有利になります。不動産収入が多い場合、個人事業主であれば自分の所得税が累進課税のため跳ね上がりますが、法人を設立していればサブリース契約等で所得を一旦法人に移すor法人所有物件で収益を上げる仕組みにしておき、そこから配偶者へ再配分すれば、所得税が大幅に削減できます。子供が15才以上であれば、取締役として登録できますし、当然給与も出せますので更に節税できます。
 ここで注意が必要なのは、配偶者や子供へ給与を出しすぎると税務署の監査で引っかかります。一般常識的に考えて、たいした仕事もしていないのに役員給与を年収1000万とか支給していたら、NGです。借金などの責任、リスクを背負っている場合や、事業の売上げに貢献し成果がある場合は別として、通常の事務員となんら変わらない仕事内容であれば、通常社員と同等の給与しか認められていないと考えていいと思います。
 また家族への給与の出し方については奥が深く、形態もいろいろありますので、どういう形態がいいのかについては、次回or次々回で書きたいと思います。

 また当然ですが、法人ですので退職金も出すことができます。日本は退職金制度が充実しており、諸外国と比べても税務上とても優遇されていますので、使わない手はありません。20年以上勤務すると控除額が大幅に増えますので、法人を設立したら例え給与が0円であっても出来る限り、配偶者や子供を所属させておきましょう。退職金控除は5年に一回という縛りはありますが、節税効果が絶大ですので是非使いたい制度です

社宅制度

 「個人事業主の節税」ページでも書きましたが、不動産事業の事務所と自宅が一緒であれば、約50%を事業用として節税できます。(割合は人によって異なりますが。)ところが法人で役員社宅にするとさらに節税ができます。
 というのも国税庁のHP「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」に記載されている通り、以下の3項目の合計額を賃料として徴収していれば、残りは会社負担で良いとされています。(小規模な住宅の場合)
 (1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
 (2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
 (3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

具体的にどれくらい節約できるのか、以前「7.物件の選び方2(採算計算の具体例)」で採算計算したワンルームマンション(1,270万円、家賃68,700円)で計算してみましょう。(ファミリーでワンルームマンションに住むことはないですが、あくまでどれくらいお得なのかという意味で参考にはなるかと)
 所在地は大阪市中央区の一等地で、各値は以下の通りです。
 (1)2,852,000円×2167/57909×0.2%=213.4円
 (2)12×21.67/3.3=78.8円
 (3)9,572,981円×2167/57909×0.22%=788.1円

つまり、213.4+78.8+788.1=1080.3円相当を社宅の家賃として社長が自己負担すれば、残りは法人の経費とすることができます。もともとの家賃が68,700円ですから、割合でいうとなんと1.58%以下!しかも社宅兼法人事務所という形態で、法人事務所割合が半分であれば、社宅割合が半分になりますのでその半分になった社宅費用から上記割合(1.58%)を社長が負担すればいいので、実質負担は1%を切ります。つまり賃貸の家賃はほぼ経費として落とせるということですね。これだけ法人社宅が恵まれているのであれば、個人事業主として家賃を半分負担しているのが馬鹿らしいですよね。
 ここでさらに言うと、敷金・礼金、火災保険等についても法人負担が可能です。敷金については将来全額返却されるお金ですので全額法人負担が可能ですし、礼金や火災保険も上記割合1.58%(or法人事務所を兼ねているなら0.79%)だけを社長個人が負担すればOKです。

 この社宅制度はとても有効ですので、法人を設立したら必ず利用したい節税方法ですね。ここで1点注意なのが、社宅制度を使うためには、賃貸借契約を法人名義で締結する必要があることです。個人名義で契約してしまうと税務署は確実に否認しますので、注意して下さい。また、上記の個人負担額を計算するためには、固定資産税課税標準額が必要になりますので、大家さんから開示してもらうか賃貸借契約書を持参して役所で「固定資産公課証明書」を取得しましょう。
 かくいう私はどうなのかというと、実は社宅制度を使っていません。というのも現在勤めている会社に社宅制度があり、今住んでいる賃貸物件は勤務先が契約しています。実家賃から補助額(5万円)を差し引いた金額を家賃として勤務会社へ支払っている状態です。勤務先の社宅制度を使わなければ、自分の設立法人の社宅制度を使うことは可能ですが、月5万の勤務先の福利厚生を使わないのは、キャッシュフローとして全くメリットがありませんので、自分の設立した会社の社宅制度を使っていないという訳です。
 社宅制度のない会社(住宅手当は社宅制度ではないので上記節税方法は使用OKです)に勤めている方は、是非使ってみて下さい。実質的に自分の所得税率相当だけ割引されます。

出張手当

 法人は社員に対して、出張手当を支給することができます。この出張手当は何がいいかといいますと、なんと所得税の対象外なのです。そのため、家族経営の法人を設立したら、絶対使いたい節税方法です。
 国内出張旅費規程や海外出張旅費規程を定めておくだけで、ある程度自由に宿泊代や手当額を支給できます。一般的に距離に応じて支給額を上げることが出来ますし、自分がよく行く場所に対して手当が支給できるよう定めておけば、手当を支給して節税が捗ります。もちろん、常識的な範囲を逸脱するような額を手当として支給していたら、税務署も黙ってはいませんので、参考に私の会社の旅費規程を以下に載せておきます。
(このまま使用しても大丈夫という意味ではありませんよ。あくまで自社に合わせた形でリメイクしていただければと思います。)
 ・国内出張旅費規程
 ・海外出張旅費規程
 ・出張申請書

 さらに国家公務員等の旅費に関する法律も参考にするといいと思います。これをある程度理解し、基準にしておくと何がいいかというと、税務署から否認される可能性が限りなく低くなるからです。国家公務員がOKなら当然それと同等であれば、否認できないですから。国家公務員の旅費については、飛行機を除く公共交通機関の領収書が不要とされています。これは全ての出張件名を領収書で精算していると、その事務手続きが膨大になり、コストが掛かりすぎるから一律で処理することで効率化しているということです。そのため、実態と差額が発生していても個別に請求しないという理屈です。
 役員であれば、たとえ中小企業だとしてもグリーン車に乗ったり、高いホテルに宿泊しても認められます。しかも国家公務員と同じく領収書不要にしておけば、公共交通機関はグリーン車相当額の固定額とし、宿泊料も固定とすることで、たとえ差額で余りが発生しても問題ありません。もちろん出張手当も交通費と別で支給でき、所得税を取られずに自分の懐に入れることができます
 
 個人事業主の節税方法で記載したリゾート地の不動産投資方法を思い出して下さい。リゾート地に法人名義で不動産を所有し、上記の知識をフル活用すればどれくらい節税できるかお分かり頂けると思います。
 もちろん交通費は掛かりますし、儲かっていないのであれば赤字が増えますので注意が必要です。基本的に節税は黒字が多すぎて税金だらけの人にしか旨味はありません。所得が多い人はリゾート地で不動産管理という名目でバカンスを過ごすことで、旅費を経費算入し、所得税が掛からない出張手当まで貰えることができますw

 最後の段落は、誇張した不適切な表現が含まれていますが、遠隔地に不動産を所有することでメリットがあることはご理解いただけたかと思います。


 まだ項目の半分しか書いていませんが、長くなりすぎるので次回に分けたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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