実印の意味

コラム

 不動産に抵当権設定するときに実印を押しますよね。今回は実印についての豆知識を書きたいと思います。私は司法書士や弁護士資格を持っている訳ではありませんので、ここの内容を保証できる立場にありませんが、一応それなりのところを調べてはいますので、参考にはなるかと思います。

そもそも実印と認印は何が違うのか?

 端的に言うと市役所へ実印登録した印鑑かそうでないかの違いと言えばそれまでですが、それだとあっさりし過ぎなので、もう少し詳しく書きます。

 まず重要な契約書には判子を押して契約すると思いますが、民法上はこの判子が実印だろうが認印だろうが契約者双方がそれぞれの意思で契約したと見なされるため、実印、認印どちらの判子でも契約の成否には影響がありません。ところが中には悪い人がいるもので、「私が押印したものではないから契約は無効だ」と嘘の主張をしたり、逆に「契約書を捏造」したりする人がおり、そもそも本当にその契約書の押印はその「本人が意思を持って押したものなの」かが重要になることがあります。
 そこで本人が自分の意思で押印したかどうかを第三者が保証することで、契約の成立を証明できるようにしようという制度が実印です。実印は市役所(第三者)がその押印がその人の意思に基づいてされたことを保証するということです。そのため裁判で争うことになったとしても実印+印鑑証明書の効力は絶大で、言い逃れは出来ません。この2つが揃うことは非常にリスクがあります。逆に言うとこの2つが揃わなければ効力はなく、実印は認印に成り下がるということです。
 (正確には違いますが、国の押印についてのQ&AのP4に記載されている通り、印鑑証明書を手に入れない限り、契約相手はあなたの実印の印影がわかりませんし、あなた以外から印鑑証明書を入手できる可能性は限りなく低いため、認印と変わらないということです。)

 基本的に実印は契約において債務者(金銭等を支払う義務がある)側が押すことになります。実印でなければ、債務者が「この契約書は身に覚えがない」と言い出しかねないため、実印と印鑑証明書のセットで言い逃れ出来ないようにする必要があるからです。その逆の債権者(金銭等を支払ってもらう権利がある)側が実印である必要がないのは、債権者が「お金を貸した記憶がない」といった主張して債権放棄をしても誰も困らないからです。

実印を押すこと+印鑑証明書を渡すことのリスク

 では、上記の通り印鑑証明書がなければ実印は効力を発揮しないのですから、実印を認印代わりに使用してもいいかと言うと、そうではありません
 昔から印鑑偽造や印影偽装により、多額の借金や不動産売買などを行い、逮捕される事件が後を絶ちません。そもそも実印が求められていない契約に対して、実印を使うことはリスクでしかありません。その契約自体はあなたの意思で行っているため問題はありませんが、押印されている印影があなたの実印だと知ることで契約相手が要らぬ出来心を起こし、複製してやろうと思ってしまうかもしれないからです。実印が必要ない場合に、認印を使用することは自己防衛の点で重要だと考えられます。

 仲介業者から売買契約書や媒介契約書に実印を押すよう言われても、堂々と断って下さい。通常レベルの不動産であれば、認印で取引しているからです。(百億超えの都心ビルとかなら分かりませんがw)
私は何回か実印を求められましたが、全て「印鑑証明書の添付が不要であれば実印の意味がないので認印で押印します」の一言で納得して貰えました。

 逆に印鑑証明書を渡すことのリスクも上記と同じです。印鑑証明書は(当然ですが)印影が鮮明に印刷されています。これこそ、不用意に渡してしまうと複製して下さいと言わんばかりのものです。後述しますが、印鑑証明書を求められても相手や契約の重要性を考えて渡しましょう。銀行であったり、司法書士の方など信用が高い属性の相手にしか渡さない方がいいでしょう。融資を斡旋している仲介業者の不動産売買のケースで、司法書士もその提携金融機関指定の場合は、不動産仲介業者に印鑑証明書を渡すケースもあるかと思いますが、初めて取引をする業者である場合は注意しておきましょう。その仲介業者の担当者が要らぬ出来心を持つかも知れないですし、悪意はなくても紛失するリスクもあり得ます。担当者が頼りなさそうであったり、だらしない感じがしたら「印鑑証明書は重要書類だから金融機関や司法書士へ直接郵送したい」と相談してみましょう。応じて貰えることがほとんどだと思われます。(断るようなら正当な理由を求めましょう。普通の業者であれば印鑑証明書のリスク・重要性を知っているはずですから、受け入れるはずです。)

 とはいえ仲介業者の担当者に対して、”あなたを全く信用していません感”を前面に出すのも得策ではありませんので、きっちりしていて信用できそうであれば任せていいと思います。仲介業者の担当者との関係を良好にしておくことは、次以降のいい物件や融資を紹介して貰えるかどうかにも繋がってくるので、”できる”担当者であればスムーズに取引できる形で進めるのがいいと思います。

実印(印鑑証明書)が必要なケース

 明確に法律で決まっているのは、法人登記の新規申請、自動車登録申請や不動産登記における所有権を譲渡する側の申請、抵当権設定の申請、遺産相続の申請、公正証書として遺言書作成場合などが該当します。
 これ以外は私文書扱いとなりますので、明確に印鑑証明書が必要なケースはなく、契約当事者同士で決めることになります。 では、私文書においてどういう場面で実印が必要かといえば、不動産関連では賃貸借契約の賃借人の保証人になった場合と、金融機関との金銭消費貸借契約書にはほぼ間違いなく必要です。
 賃借人の保証人のケースは、本人が仲介業者のところへ来て面前で身分証明書提示+コピーの上、署名捺印すれば不要とする仲介業者もいれば、一律に実印+印鑑証明書のセットを要求する業者もいます。個人的な感覚で言えば、保証会社を付けないのであれば、賃貸借契約書と言えど滞納しまくる賃借人となった場合は借用書と何ら変わらなくなるので 実印+印鑑証明書のセットが必要という感覚は分かりますが、保証会社を付けるのであればそもそも保証人を付けること自体やり過ぎ感はあります。


 今回はちょっとしたコラムで記載しました。ここの記事は防備録&家族へのメモという意味で保存しておこうと思って記載していたりもします。自分でも久しぶりに契約する場合は、チラッと見て確認していたりといった使い方もしてします。
 次回の内容は決めていませんが、またー。

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