7.物件の選び方2(採算計算の具体例)

物件の選び方

キャッシュフローを計算してみよう

 前回キャッシュフロー計算による採算判断方法を書きましたが、ちょっとイメージしにくかったと思いますので、具体的な物件を例にして採算計算してみましょう。架空物件だと現実味がないので、私が過去に購入した物件でやってみます。

  キャッシュフロー = (家賃)-(共益費)-(固都税)-(ローン返済額)
 この式に数値を当てはめて行きます。家賃は68,700円、共益費は8,800+300=9,100円、固都税は1,270*0.005÷12=5,300円となります。ローン返済額の計算は、この物件は築5年で35年ローンが組むことができるため、返済期間は35年、金利は仮に2%とすると年額508,000円、月返済額は508,000÷12≓42,300円となります。
 よってキャッシュフローは68,700-9,100-5,300-42,300=12,000円となります。
(※管理を管理会社に委託する人は余分に毎月3,000円ほど掛かるので忘れないように。)

 ここまではワンルーム、ファミリーマンション、戸建て(管理費が不要ですが)に関係なく一緒の計算をすると思いますし、投資家の人はみんなやっていることです。ここからは空室リスクと物件設備の修繕費、仲介手数料等の費用を計算していきます。(そして、ここからは物件属性や人によって内容が変わってきます。)

 この物件は大阪都心の一等地にあるワンルームのため、家賃がぼったくりでなければ長期空室は考えられません。そのため、3年に1回退去・入居の入れ替わりがあると想定し、入退去時の空室期間は1ヶ月と仮定します。この場合の費用概算は
〇入退去の度に発生する費用
 ・空室1か月分の家賃(68,700円)
 ・賃借人退去後の清掃費 2.5万円
 ・不動産業者への新入居者仲介手数料(家賃2ヶ月分、137,400円)
   合計約23万円
〇設備修繕関係の費用
 ・エアコン交換  10年に1回 8万円(取付、廃棄代込み)
 ・給湯器交換   15年に1回 6万円(取付、廃棄代込み)
 ・壁紙張替    10年に1回 5万円
物件購入時の築年数や、予定する所有期間にもよりますが、15年間所有したとして計算すると、
 〇キャッシュフロー(収入側)
  12,000*12ヶ月*15年=216万円
 〇キャッシュフロー(支出側)
  入退去回数 5回 → 23*5=115万円
  エアコン、給湯器、壁紙をそれぞれ1回交換したとして、8+6+5=19万円
 となり、216-115-19=82万円 キャッシュフローがプラスです。これを一月あたりに換算すると820,000÷15÷12=4,550円となります。つまり、家賃が今より平均で4000円下がった状態でも無理なく運用していけるということですので、30年後までになだらかに8000円くらい下がったとしてもトータルのキャッシュフローとしては黒字を維持できるということになります。
 この物件を評価するあたり、将来的に投資のキャッシュフローだけで生計を立てるつもりなのであれば少し物足りませんが、融資のローンを家賃で返済できればいいというのであれば十分過ぎるレベルです。この物件は都心の築浅ワンルームのため、利回りは低めですが、空室リスクが低く安定しています。もっと利回りを求めるのであれば、築古の木造や鉄骨の物件がいいですが、空室リスクが高くなります。(築古木造や鉄骨は住みたくないという人が一定層いるため) リスクとリターンは相反していますのでそこを考慮して物件を選択する必要があります。
 ここでの計算はあくまで一例です。下記も読んでいただけると、経験のない人が精度良く採算計算をするのは難しく感じると思いますが、何度も練習すればそんなに難しくありません。1つ注意する必要があるのは、家賃収入についてです。入居中であればその家賃が入ってくるのは間違いないのですが、相場とかけ離れた家賃でないかは確認が必要です。

 ちなみに上記の想定は実態よりも少し厳しめに算出しています。エアコンは15年以上使えたり、給湯器も20年くらい使えることは全然あります。壁紙も15年に1回くらいで大丈夫だと思うのですが、賃借人次第と言ったところです。きれい好きの女性とかが住んで下さると全般的に長持ちするので、大家としてはとてもありがたいです。少し話しはそれますが、賃借人のターゲットを絞って内装や設備を女性向けにして募集するというのは戦略的には重要だと思っています。私は物件を購入するときに、妻にその物件の外観デザインが女性の選択肢に入るかを聞くようにしています。
 あとここで重要なのが、賃借人の入退去回数です。上記例では1回23万円掛かっていますが不動産経営において、この費用が一番ネックなのは一目瞭然です。対策としては、2つあります。
 ①出来るだけ長期で住んでもらう
 ②仲介手数料を1ヶ月にする

 ①は賃借人の満足度を上げれば効果はあるものの、賃借人の事情(転勤・転職)もあるので限界があります。
 ②は仲介手数料を1ヶ月にする方法です。大家側の仲介手数料は2ヶ月が一般的になっていますが、これは賃借人との間に2社の不動産業者が入っているからです。このあたりの構造は別途書きたいと思いますが、管理委託会社等に依頼するとしっかり2ヶ月分取られてしまいますので、自分で管理し、仲介依頼も所有物件の近所の不動産業者へ依頼すれば1ヶ月でも客付けは十分可能です。

 大分話しがそれましたが、上記のように想定費用は大家の努力次第で大きく変わってきます。想定する費用は、所有する物件のエリアや賃借人によって大きく変わるため、あくまで上記の計算は例であり、大きく異なることはあると認識いただければと思います。
(例えば、大学傍の物件で大学生が入居することが多いのであれば4~6年継続して住んで貰える可能性が高いですし、ベッドタウンの物件は時期(12~3月、8月)を逃すと空室が長期化しやすいです。)


ここまではあくまで、ネット上の不動産業者情報だけでの判断でした。実際は物件の買付までに、もう少しやることがありますので、その辺を次回書いていきたいと思います。

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