今回は売買契約書と手付金支払いのチェックポイントについて書きます。重要事項説明書と被るところが多いですが、契約内容は契約書が重要事項説明書よりも優先されますので、こちらを重点的に確認するようにして下さい。
売買契約書のチェックポイント
売買契約書は契約書ですのである意味全てが重要ですが、全部をいきなり理解するのは大変だと思いますので、初めての方に確認して欲しいポイントに絞って解説したいと思います。業者によって様式は異なりますが、大抵「本文」と「契約条項」から成っており、各部でのチェックポイントは以下となります。重要事項説明書のチェックポイントとほぼ同じため、詳しい解説は重要事項説明書のページを参照していただければと思います。
(本文)
1.物件名称、住居表示、床面積、築年数は合っているか。
2.借地権や定期借家権ではなく、所有権となっているか。
3.売買代金、手付金の金額は合っているか。
4.融資を受ける場合、「融資未承認の場合の契約解除期限の日」は審査結果が出る予定の日よりも後の日付となっているか。
(契約条項)
5.「融資利用の特約」の項目の記載があり、かつ有効となっているか。
6.「引渡し前の滅失・毀損」の項目の記載があり、かつ有効となっているか。
7.「既存不適格」の文言がないか。
8.契約不適合責任(瑕疵担保責任)の扱いはどうなっているか。
お気づきの方も多いと思いますが、重要事項説明書よりも確認項目が減っています。それは重要事項説明書が物件の説明資料という位置づけのため、そちらの方が情報量が多いからです。異なるのは4のローンに関する項目だけです。ここでは、この4について解説します。
4「融資未承認の場合の契約解除期限の日」について
不動産業者としては、ローン特約で解除されると一円も報酬が貰えず、完全なタダ働きとなってしまいます。役所や管理組合へ調査して仕上げた重要事項説明書や売買契約書も全て無駄になってしまうため、絶対に避けたい訳です。そのため、不動産業者はこのローン特約による解除期間を出来る限り短くしようとします。
銀行の審査が終了する日は契約段階ではあくまで予定であり、絶対にその日に審査が終わる訳ではありません。そのため、ローン審査終了予定日とこの解除期限の日が近すぎると審査に落ちたときにローン特約が使えなくなる可能性があり、リスクが高い状態となります。今まで契約してきた中で、銀行の審査が終了する予定日の次の日で設定してきた業者も居たくらいで、最低でも1週間くらいは余裕を見た方がいいと思います。審査結果の連絡が1日くらい延びることは全然あり得ますし、連絡を受けた日がたまたま自分の都合が悪く、次の日は業者が定休日で連絡が付かず、ローン特約解除の連絡が3,4日遅れるなんてことは普通にあり得ます。業者は嫌な顔をするかも知れませんが、最低でも1週間くらいの余裕は貰っておきましょう。
重要事項説明書には記載のない内容としては以上ですが、重要事項説明書とほとんど同じだからといって、手抜きして契約書の内容を確認しておかないと痛い目に合いますので、重要事項説明書と売買契約書で内容が一致しているかは必ず確認しておきましょう。
手付金支払いについて
売買契約書締結が終わると手付金を支払うことになります。この手付金の注意点と役割を書きたいと思います。
〇手付金支払いでの注意点
ズバリ「領収書をもらうこと」です。
中には銀行振込で行うことにより、領収書発行を割愛するといった不動産業者さんもいますが、現金手渡しで支払った場合は必ず領収書を貰いましょう。
逆に領収書の発行が難しいのであれば、手付金を手渡しで支払ってはいけません。
銀行振込であれば金融機関が証明してくれますが、手渡しによる金銭の授受は誰も証明してくれませんので、領収書とセット行うようにして下さい。(当たり前ですかね。)
銀行振込であっても、その証明書の発行には手間が掛かりますので、領収書を発行して下さいと言えばまともな業者であれば出してくれます。渋るようであれば、手付金詐欺を疑いましょう。
細かいですが、領収書の金額は5万円を超えることになるでしょうから印紙が貼付してあるかについても確認しておきましょう。印紙がなくても領収書としては有効ですが、発行者が脱税していることになるので、指摘してあげましょう。(それでも印紙を貼らない人はいましたが・・・苦笑)
〇手付金の役割
次は手付金の役割についてです。以下の3つの役割があります。
1.契約を有効にする。(証約手付)
2.契約を解除することができるようにする。(解約手付)
3.契約不履行のときに違約金を発生させ契約を解除できる。(違約手付)
順に説明します。
1.契約を有効にする。(証約手付)
契約書を締結するときに署名捺印すれば契約成立となりそうですが、正確には手付金を支払わないと効力が生じません。というのも契約書の条項に契約と同時に手付金を支払うと明記されているため、署名捺印だけしたものの、手付金が未払いだと契約成立には不十分となります。きちんと物件を押さえるためにも契約と同時に手付金を支払うようにしましょう。考え方は商品の予約とかと同じと考えればいいと思います。予約金を払わないと、いくら申込書をお店に提出しても予約したことにならないのと同じです。
(だからと言って、契約書に署名捺印後かつ手付金未払い状態で白紙撤回したいと申し出たらどうなるかは、厳密には裁判所の判断にはなると思いますが。。。)
2.契約を解除することができるようにする。(解約手付)
契約書の条項に書かれていると思いますが、手付金を放棄することで契約を解除することができます。通常、契約を解除するには「買主の債務不履行」や「売主の契約不適合責任」などの支障をきたす原因が発生するか、売主・買主で合意しないとできないことになっています。しかし、それではあまりにも不便なため、手付金を支払うことで売主・買主お互いに解除権を持てるようにしているのが解約手付です。この解除権が行使できるのは、買主であれば売主が登記手続きする前、売主であれば買主が金銭消費貸借契約締結後の売買代金支払い前になります。つまり、相手方が売買の正式な手続を済ましていたら、解除して後戻りすることはできないということです。
3.契約不履行のときに違約金を発生させ契約を解除できる。(違約手付)
これも契約書の条項に書かれていると思いますが、売主、買主どちらかが契約違反をした場合は、期間を定めて催告した上で手付金相当額を貰って解除できるというものです。これは例えば、買主が売買代金支払いを完了しているのに売主が登記書類を渡さないといった、相手方が契約行為に応じてくれないときに使える権利です。
2と似ているようですが少し異なります。2は手付金を放棄する側が意思決定しますが、3は手付金を貰う側が意思決定する点が異なります。よっぽどのことが無い限り、経験することはないと思いますが、知識として持っておくといいと思います。(実際にこんなケースになったら、大変面倒で鬱になりそうですが・・・苦笑)
(番外)火災保険の見積もりを取っておこう
売買契約書とは何の関係もありませんが、これくらいのタイミングで購入予定物件の火災保険の見積もりを取っておきましょう。というのも、火災保険は店舗に行けばすぐに申込みできますが、ネット保険が安いのは言うまでもありません。私は売買契約書を締結したら、見積もりを取るようにしています。というのも、ローン審査に落ちない限り物件を購入することになるでしょうから、金銭消費貸借契約を締結して登記手続きを申し込んだ日から所有権が発生しますので、予め火災保険と地震保険は掛けておく必要があります。そのため、火災保険の手続きをこれくらいのタイミングでやっておくと丁度いいのです。ローンの審査が終わった頃に、火災保険の見積もりも来ているでしょうから、一番お得な保険会社を見定めておくとスムーズに手続きができます。
今回は法律チックな内容であんまり面白くなかったと思いますが、次回は融資(ローン申込)について解説していきたいと思います。それでは~。
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